レインツリーの国

レインツリーの国

レインツリーの国


<あらすじ>
ライトノベル『フェアリーゲーム』について書かれたブログを読み、ブログの管理人「ひとみ」と話してみたくなった関西弁の少年「伸(しん)」。
同じ小説を読む者同士、メールのやり取りを通じて理解を深めていく。
伸は思いを募らせ「会ってみたい」と打ち明けたものの、ひとみは難色を示す。
なぜなら彼女には聴覚障害があった。



自分は障害を持つ人の考えとかわからないし、たぶん出会えば同情なしには接することができないと思う。
でもその反面、障害を持つ人の考えを分かろうとせずに、同情することがいけないことのような気もしてる。
要は、障害を持つ人について、彼らの感情などを真剣に考えたことがない。


作中の伸も同じ。
障害を持っているということを隠すひとみに対して、隠すなと言う。
それは、隠さない方がこっちは様々なことに注意できると思うから。
耳が聞こえ難いなら言ってくれればそれなりのフォローをするのにと。


でもひとみにとっては、障害を持っているということで今までたくさん嫌な思いをしている。
障害を持っていない人には持っている人の気持ちは絶対に分からない。
だから相手の気遣いにさえも傷つく。


(こういう表現が適切かどうか、私は勉強不足で分からないけれど、)
健常者が障害者に対して思う本音を伸がひとみにぶつける。
そしてひとみは障害者としての苦悩をぶつける。
障害者と健常者が、互いに真剣に向き合い、思ったことを隠さず言い、認め合う様子が、読みやすく描かれています。


もともとネットを通じて知り合った者同士、やり取りの大部分がメールで行われている点も、読みやすい理由の一つかも。
障害というテーマではあるけれども、重くならないのは視点のバランスの良さかもしれない。



この『レインツリーの国』は、前回紹介した『図書館戦争』シリーズの2冊目に登場します。
図書館戦争』の時点では架空の小説だったものを、後から小説化したらしいです。
レインツリーの国』のひとみと同じく難聴を抱える少女が好きな本で、障害者を差別する本だとして検閲に引っかかってしまうという設定。
もちろん検閲に引っかかるのは『図書館戦争』の世界の中での話で、現実には『レインツリーの国』は、障害者差別なんて微塵もない話です。
むしろ、障害者の心情を知ることができる、大切な小説と言っても過言ではないくらい。


図書館戦争』を読んだ方は必読でしょう!
読んでいなくても、『レインツリーの国』は数時間で手軽に読める長さなので、オススメです♪